生命

語るべき音節は 喉の奥で石化して
吐き出した吐息さえ 誰かの色に染まる
鏡の中に立つひとの 所在もわからぬまま
借り物の靴音で 街をなぞり続けている

透明な細い糸が 指先に絡みつき
踊らされる舞台の上 拍手だけが響く
これを鼓動と呼ぶのなら
あまりに冷たい 喜劇じゃないか

サバンナの月を突く 長い影をうらやみ
地響きをあげる鈍色の 意志に焦がれている
彼らのかせが 喉の渇きだというのなら
僕の枷は この安全という名の檻だ

優しさという名のぬかるみから引き抜いて
孤独という名の 荒野へ突き放してくれ
くじけた膝の痕跡を 敗北と呼ばないで
それは明日をうがつための 唯一のスティグマ

ひざまずいて磨く未来に 光など宿らない
打算のそろばんを 叩き割ってしまえたら
暗闇の向こう側に わずかな血の匂いがする
そこが 僕の歩むべき 最初の滑走路

サバンナの月を突く 長い影を羨み
地響きをあげる鈍色の 意志に焦がれている
不格好な歩幅でいい 泥にまみれたままでいい
計算外の絶望を 抱きしめて歩き出す

服従のドレスを脱ぎ捨てて
僕という名の 剥き出しのリアルへ
今、風が吹く
ただの、風が吹く