詩の元

  • メビウスの鏡


    君の嫌なところばかりが目について
    心の中で 小さな嵐が吹き荒れる
    あの時は まったく気づかなかったんだ
    僕を苛立たせる その歪んだ鏡の中に
    映っていたのは 誰あろう、僕自身だった


    「相手が変わってくれたらいいのに」
    そう願って 相手が変わったのだとしたら
    僕はただ 自分の影から逃げただけじゃないか?
    傷つくことを避けて 立ち止まっただけじゃないか?


    僕が変わること それだけが
    この嵐を静める 唯一の答えだった
    何かを乗り越えたその瞬間に
    僕はまた ひとつ新しい自分に出会う
    怒りの正体は いつだって
    僕のなかの 隠したい僕だったんだ


    だけど 自分が新しく生まれ変われば
    また新しい光と 影が生まれる
    次の角を曲がれば きっとまた
    見知らぬ怒りが 僕を待ち受けているのだろう


    そうやって 壊しては築き上げていく
    この心が 形作られていく
    終わりと始まりが 背中合わせでつながる
    まるで メビウスの輪をなぞるように

    僕らは巡りながら 削られながら
    本当の自分に 戻っていくんだ

  • フレンド

    泥でつくった眼鏡で
    夜空の石ころを眺めている
    価値のないと捨てた硝子
    それが一番輝いている
    僕の眼鏡はいつだって
    正しく歪んでいる

    温めていた小鳥の羽を
    風に投げた
    あの日から僕の背中には
    静かな盾ができた
    呼吸を止めると優しくなれる
    そんな魔法の盾

    すれ違う人のこと
    一人も語れないよ
    二度とあかないドアの前
    僕はただ立ちつくす

  • 自由への孤独

    家族がいても 友がいても
    僕のこころは 誰にも見えない
    わかるはずもないと 知っているから
    今日も静かに 僕は孤独だ

    人はみんな そうなのかもしれない
    言葉にすれば ちっぽけに拗れてしまうから
    この胸の奥にだけ しまっておくよ

    だけど寂しさなんて どこにもないんだ
    誰も入れない場所だからこそ
    僕は今、息をしている
    この孤独の名前はきっと
    僕が勝ち取った 「自由」だ

  • ルール破り

    レールの上を 歩いてきた
    誰も言わない ルールを守って
    真面目に、ただ真面目に
    それだけが 僕の正解だった

    だけど目の前に 現れたんだ
    たったひとつの 可能性
    それを掴むための代償は
    あの線を 踏み越えること

    声には出せない 秘密ができた
    あの日、僕はルールを破った
    手に入れたのは 歪で
    自分だけの、眩しい光

    巡り巡って 今の僕は
    また静かに 従っているけれど
    もしもまた あの日が来たら
    この手を 伸ばしてしまうだろう

    それが、間違いだとしても

  • 僕の人生


    「立ち入り禁止」の赤い看板
    その向こうに何か光があるなら
    いばらの道だと分かっていても
    僕は迷わずに足を踏み入れるだろう


    甘い蜜に誘われて落ちる虫みたいに
    「ここにはきっと素晴らしいものがある」
    そうやって同じような罠に
    何度も何度も、ハマり続けているんだ


    もしもまた、目の前に深い崖があらわれても
    「きっと見えない透明な橋があるはず」
    そんな魔法を期待して、空へ踏み出してしまう
    ああ、僕の人生っていうのは
    こういう風にプログラミングされているみたいだ


    傷だらけのこの歩き方を
    誰も「勇敢」だなんて呼んでくれないだろう
    ただの愚か者だと笑うかもしれない


    でも仕方ないんだ
    ブレーキの壊れた車みたいに止まれない
    崖っぷちで橋を信じてジャンプする
    笑っちゃうくらい不器用な
    これが僕の、僕らしい人生なんだから

  • ビロードと硝子

    色褪せない蜃気楼を両手で庇っていた
    あの砂の城だけが、確かに僕のすべてだった
    でも、水たまりに落ちた羅針盤は
    どうやらこの街の歩幅とは合わなかったみたいで

    真綿でくるむような優しい声たちに
    降るはずのない雪をそっと被せられて
    僕は綺麗なまま、一度だけ深い眠りについたんだ
    なのに、壊れたはずのオルゴールが
    胸の奥でカタカタと鳴り止まなくて

    Ah, 喉の奥に隠した硝子の破片
    密かに撫でるたび、熱い痛みが赤く滲む
    少しでも手のひらに乗せてしまえば
    またあの「温かい毛布」に奪われてしまうから

    鋭すぎるこの枯れ葉のやり場はわからない
    いっそ交差点の風に散らしてしまってもいいけれど
    今はまだ、ポケットの底で握りしめておくよ
    いつかこの欠片が、本当の朝日に反射する日を祈って

  • 愛について

    ガラスの海に 描いた月が
    触れた瞬間 波にほどけた
    「優しさ」っていう透明な嘘を
    今日もポケットで 飼い慣らしてる

    愛を語ると 舌が渇くんだ
    本音だけいつも 夜に遅れる
    気づけば僕は
    “触りやすい温度”になってた

    だけどそれは
    花瓶の水を飲み干して
    花を守るような 優しさだろう

    歌の中なら うまく抱きしめられる
    現実は 靴紐みたいに絡まる
    僕はまだ
    名前のない星を見ている

    あれが愛ならいいなって
    少しだけ思った

  • 寄り道

    寄り道だらけの地図を抱いて
    光るもの全部 触れてみたくて
    すぐ終わる夢も 僕のかけらさ
    回り道の数だけ 空は広がる

    子供みたいだねって 笑われてもいい
    名前も知らない扉を また開けてく
    続ける強さに 憧れながら
    僕は僕のリズムで 風を集める

    昨日までの熱も 消えてしまうけど
    その灰の中に 次の星がある
    「これだ」って響く音を探して
    今日も知らない景色へ 歩いてく

  • 答え

    辿り着いた水平線は
    また違う空を映してる

    やっと開いた扉の先に
    名前のない扉が並んでる

    ひとつ解いたはずの謎が
    新しい影を連れてくる

    灯りを消せば終わるのに
    僕はまだ夜を歩いてる

    届かない星を数えながら
    消えかけの地図を書き足して

    ポケットに願いを詰め込んで
    まだ見ぬ朝を探してる

    遠く霞むあの光まで
    風に背中を押されながら

    終わりのない水平線へ
    今日も漕ぎ出していくんだ

  • お知らせ

    雨のち晴れを 繰り返す空みたいに
    僕らの心も 色を変えてゆく

    うまく笑えない日は
    ポケットの中で震えるサイン
    「見落としてるものがあるよ」って
    風がそっと知らせてる

    いい日もあれば 悪い日もある
    傷ついた夜ほど 星は近くなる
    涙の跡を 地図に変えながら
    今日を抱きしめて歩いていく

    イヤな今が 残らないように
    心の窓を 少し開けて
    通り過ぎる痛みさえも
    いつか愛せる 朝になる